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日本・朝鮮・明国の水軍


それでは、次に水軍です。陸戦では無敵の日本軍でしたが、水上となると勝手が違います。戦国時代の戦いは基本が陸戦であるため、海将としての脳みそをもつ武将が少なく、兵器である船でも日本は劣っていました。というか、朝鮮が頭一つ上です。しかし、それでも世界水準から言えば二流もいいところでした。では、日本軍から細かく見ていきましょう。

日本・朝鮮・明国の水軍

『日本軍』

軍艦 安宅船(大型)、関船(中型)、小早(小型)、鉄甲船?

材質 杉・檜

武器 火縄銃(主力)、大鉄砲、焙烙火矢、弓、大筒

戦術 乗り込み格闘戦術


戦国時代として知られる十六世紀は、世界史的に見ると海軍の時代でした。イスラムとキリスト最後の宗教戦争であるレパントの海戦、そして後の海戦の流れを決定付けたアルマダの海戦などのおかげで、軍事史としては海将が目立つ時代でした。

十六世紀序盤までは、旧来の手漕ぎガレー船同士の戦いが勝負を決める形式が古代から続いていました。矢の応酬で戦いを始め、敵に船をぶつけて沈没させ、相手の船に乗り込んで格闘戦の末に勝負を決します。これが普通の戦い方です。

しかし、レパントの戦いを契機に変化がはじまります。火器が発達し、海で大砲を使えるようになった地中海世界では、大砲を乗せた船が激戦を繰り広げることになります。ガレー船と帆船が入り混じって戦ったこの戦いで、西欧諸国はある教訓を得ました。

その当時まで、戦いは機動力に優越するガレー船が主力でした。しかし、砲撃戦においてはガレー船は高さが低すぎて微妙ですし、手漕ぎなので重量にも限界があります。

そこで、西欧では主力戦艦はガレオン船と呼ばれるものになりました。帆船であるために高さを増やすことができる上、人力でないため重量が増えても大丈夫です。高さを持つガレオン船は縦に二段、三段と縦に砲列を並べることができ、火力はガレー船の数倍になります。

そして、ほぼ同じ装備を持つイギリスとスペインが世界の覇権を巡ってぶつかりました。アルマダの戦いといわれるこの海戦の勝負を決定付けたのは、新たな戦闘教義です。

大砲を主兵器としながら、スペインはいまだに乗り込み格闘戦にこだわっていました。しかし、イギリスは徹底した砲撃戦を挑み、スペインを近づかせることなく砲撃戦術でスペインの艦隊を撃滅します。この戦い以降、スペインは没落し、イギリスの興隆が決まるのです。

日本の海軍は世界で三流の存在でした。純粋なガレー船から脱却はしていたものの、帆船にはろくに大砲が乗っていませんでした。しかも、戦術は旧来の乗り込み格闘戦術です。

船にも問題がありました。材質が軽い杉と檜であり、下手に大砲を乗せると転覆してしまいます。資料によれば、安宅船には大砲三つ、関船には大砲一つが搭載可能な積載数だったそうです。ただし、安宅船は当時の西欧戦艦と同等のサイズであり、小型で弱かったわけでありません。

さらに、船を軽量にするためにモノコック式と呼ばれる設計方法をしていたために軽量・快速ですがぶつかりあいに弱く、激突戦術である衝角戦も行えなかったそうです。

こうして、世界一流の陸軍を持つ日本軍は世界三流の海軍で朝鮮出兵を戦うことを余儀なくされます。

ちなみに、鉄甲船は実在が怪しまれていますが、あった方が面白いので、考察では存在したことを前提で進めます。



『朝鮮軍』

軍艦 板屋船(大型)、挟船(中型)、鮑作船(小型)、亀甲船

材質 松材

武器 火砲(火矢)、弓

戦術 砲撃戦術

どうしようもないほど劣悪な陸軍に比べ、水軍はなかなか優れたものを持ちます。火砲という、火矢を飛ばすという前時代的な砲撃装備ですが、大砲を持たない日本船ならどうということはありません。

朝鮮水軍は世界最新戦術である、徹底した砲撃戦を戦闘教義としていました。そのため、接近しようと近づく日本水軍を一方的に攻撃することができました。

大砲に関しては大筒の方が性能がいいのですが、日本の船は杉で出来ているため軽量であり、大型船で三門、中型戦で一門しか積めません。対し、朝鮮水軍の大型船は十四〜二十二の火砲を積み込むことができません。火力において、旧式であろうと朝鮮軍が圧倒的に上だったのです。

戦闘教義、火砲の優越と優位に見える朝鮮水軍の長所はもう一つあります。それは船体が加工の難しい松で出来ているため装甲が厚かったのです。重量も重く、二十二の火砲を載せてもひっくり返りません。ただし、代償として鈍足となります。

さて、朝鮮水軍と言えば亀甲船です。存在は確かなのですが、いろいろと尾ひれがつきすぎているのが現状です。まるで無敵の船のように書かれていますが、実際のところはもし全てが本当でも、所詮は世界二流の兵器であったと言えるでしょう。

ちなみに、私が留学先で知り合った韓国人の話では亀甲船は世界で最初の装甲艦であったらしいです。どこかで聞いた話ですね、鉄甲船に似てます。しかも、当時の資料で金属装甲に関して一文字も言及されていないところまでそっくりです。

その上、亀甲船の方は鉄甲船のように「鉄の船である」といった金属装甲を匂わせる記述さえありません。妄想の産物です。鉄甲船を装甲艦と言い張る連中より性質が悪いです。でも、面白いのでこの考察では装甲艦という前提にして進めます。



『明国軍』

軍艦 ジャンク船(大型船)、以下不明

材質 不明

武器 不明

戦術 不明

不明ばかりで失礼します。まったくもってわかりません。そもそも、明水軍が日本とやりあうのは最終決戦一回のみであり、よくわかりません。そして、研究の意味もあまりないのでそこまで調べませんでした。

船の形状は朝鮮と同じジャンク船です。というか、朝鮮が中国と同じジャンク船です。材質はわかりませんが、大砲を積んでいた可能性は高いでしょう。

ただし、所詮陸軍国の水軍なのでせいぜいが沿岸警備隊なので、まともな砲撃戦闘教義は育っていなかったものと想像されます。



『総括』

哀れすぎる陸軍に比べ、装備こそ哀れですが、戦闘教義などの面で朝鮮水軍は日本・明水軍の上を行った存在だと言えるでしょう。事実、朝鮮水軍は日本水軍相手に幾度もの勝利を得ています。

しかし、極東で最強でも世界で言えば二流の軍隊です。未だに火砲を使っている上に多層式砲撃台を持たない船では、当時最強のガレオン戦に勝利することなど出来ないでしょう。

朝鮮式の船は、西洋で言うところのガレアス船に対応する存在です。ガレー線の手こぎ動力と、ガレオン船の帆動力の二つを持つ船ですね。レパントの海戦で大活躍したこの船は、大量の大砲を装備して戦いました。

朝鮮式の船は、このガレアスに近いです。と、いうか東アジアの戦艦が全部こんな感じです。帆の動力は優秀ですが、小回りが利きにくいのでどうしても手こぎ動力に頼ってしまうわけですね。乗り込みなら手こぎの方が素早く小回りが利いていいのですが、砲撃船向けの船になると手こぎは苦しくなります。ガレー船は前時代の兵器なのです。

そのため、いかに猛威を見せつけた朝鮮式水軍でも、世界的に見れば遅れた軍隊だったわけですね。正直、この時期の西洋はイスラム勢力との血みどろの海戦で鍛え上げられていたので、海賊退治しかしてこなかった連中とはわけが違うということなのでしょう。

結果、日本軍は一流の陸軍と三流の海軍を持ち、朝鮮軍は三流の陸軍と二流の海軍を持つという歪な軍隊ということになります。どちらも何か、こう。決定打に欠けますね。ちなみに、明国は二流の陸軍と三流の海軍というのが私の評価です。



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