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中央突破


軍隊は陣形によって戦場を支配します。点で戦場を支配する過去の時代も、面で戦場を支配する現代もその概念は変わりません。範囲の広さが異なるだけです。

中央突破

陣形は基本的に正面以外からの攻撃に弱いです。そこで、部隊は敵を包囲するように攻撃します。包囲は比較的簡単な戦術だからです。成功は簡単ではありませんが。

敵を包み込む包囲は完璧な戦術ではありません。敵を包囲しようとすると、敵は陣形の厚みを薄くして戦線を伸ばし、包囲を妨害します。これを延翼といいます。

横に伸ばしたり直角に部隊を配置したりなど、包囲は簡単に防げます。なら、可能な限り陣形を薄くして広げれば簡単に敵を包み込めると誰もが考えるはずです。

しかし、実際はそれは起こりません。なぜなら、包囲の対極に位置する戦術が存在するからです。その戦術を中央突破といいます。

中央突破は敵の陣形を、文字通り突破することです。陣形を兵士に貫通された敵は、指揮系統が分断されます。伝令は届かず、個別に戦う必要があるからです。

さらに、突破した中央に兵を送り込んでそれを維持すれば敵を内から外へ側面攻撃できます。さらに、相手の後ろに回り込んで背面包囲も可能なのです。

つまり、中央突破とは包囲にいたる、もう一つの手段と言えるでしょう。最終的に、部隊は相手を包囲して勝利します。通常包囲は敵を外側から包み込み、中央突破は内部から包み込みます。

中央突破の存在から、陣形は極端に薄くすることができません。できるだけ薄く、突破されない程度に調整する必要があります。

包囲と突破はどちらが優れているでしょうか。実は、包囲のほうが断然有利です。包囲は敵の横や後ろといった弱点を突きます。

敵の左翼を打撃する場合、その右に敵はいません。つまり、包囲を試みる場合、敵は一方向にしかいないのです。

しかし、中央突破となると、正面、右、左と集中的な攻撃を受けます。つまり、メチャメチャ危険なんですね。

そのため、多くの名将は側面から敵を崩して勝とうとする傾向があります。たまに戦勘に優れた名将が突破に成功することもあります。

突破は兵と将の能力がより必要とされるため、非常に難しい戦術です。しかし、うまく使いこなせれば大きな力となります。

戦史的に見ると、数に勝る側は兵を広く並べて包囲を試みます。弱小側は薄くなった正面を突破して勝利を見出すことを強いられやすいです。突破は弱者の戦術なのです。

八陣を知る人なら理解できると思います。敵を包み込む鶴翼陣は多勢が用い、突破力に優れる魚鱗陣は小勢が用います。

数が少ない方は包囲されにくい狭い場所で、敵の弱点を突破することで勝機を見出せます。歴史的に見てみると、アレキサンダー大王は五倍の敵を相手に狭いイッソスで会戦を行い、ダレイオス大王の中央を突破し勝利しています。

このように、包囲と中央突破はお互いをけん制しあいながら存在しています。名将は、どちらかの方法で相手を圧倒することを狙いますが、たいていは包囲の成功を求めて機動する傾向にあるようです。



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