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日本・朝鮮・明国の陸軍 |
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それでは、まず三国の軍隊から見ていきましょう。陸軍においては、戦国時代という内戦の中で鍛え抜かれた日本軍が圧倒的な優位を示しています。しかし、明国も負けてはいません。逆に、朝鮮はあまりにも哀れです。では、日本軍から細かく見ていきましょう。 ![]() 『日本軍』 軍隊 歩兵重視 騎兵軽視 武器 火縄銃(主力)、長弓、槍、刀、大鉄砲、馬上筒 防具 当世具足、御貸し具足 戦術 小銃戦術 命令系統 封建軍の寄せ集め 戦国時代を戦い抜いた日本は最新兵器である鉄砲を軸に、さまざまな効果的な武器を持ち、その戦闘能力は世界でも最強と言ってしまえるかもしれません。別項目で述べた数々の世界に先駆ける要素から、日本軍のすさまじさがわかっていただけると思います。 ところが、一見無敵の日本軍にも弱点があります。それは、大砲の装備比率が貧弱すぎることです。後に明軍が使用する大砲に苦しめられることになり、日本軍は大砲を装備して唯一の弱点を補います。 大砲を得た日本軍の戦闘教義は、後にグスタフ・アドルフが三兵戦術を生み出すまで、世界最強のものであったと言っても過言ではないでしょう。 『朝鮮軍』 主力 騎兵重視 歩兵軽視 武器 弓・槍・刀・手砲(旧式銃) 防具 綿甲(内側に鉄板を仕込んだ革鎧)、服 戦術 騎兵突撃 弓矢攻撃 命令系統 統一指揮で動く国軍 反乱を恐れるあまり、地方の軍縮を国策にしていた朝鮮軍はあまりにも貧弱であり、武装も一世代前のものでした。鎧こそ、明国が積極使用する綿甲を装備していますが、これを身に纏うのは数少ない常備軍の一部だけでした。 朝鮮陸軍は、遊牧民と縁の深い民族であるため優秀な騎兵を抱えていました。そこで、中世軍らしく騎兵重視の軍隊でしたが、数の上の主力は歩兵でした。しかし、この歩兵に問題があります。一般人を緊急で徴集しただけの寄せ集めであり、ろくに防具もなく武器は短い槍か刀です。 朝鮮歩兵の主力武器である弓は性能が悪い上に、弓の性質上、多大な訓練が必要でろくに使いこなせるものではありませんでした。 さらに、宗主国様である明国が火薬の製法・使用法を国家機密にしているために朝鮮軍の火器は一世代前のものでした。金属の弾丸を飛ばすという発想はなく、武器は火薬をつけた矢でありとてもではないですが、日本の火器に対抗できるものではありません。 しかし、なぜか韓国ではこの旧式ロケット弾が画期的な兵器であり、誇らしげに語られています。謎です。そして、手砲というのは初期の火縄銃のことです。トリガーはなく、手で火縄を起爆薬に押し付けます。銃身が短く、射撃姿勢が安定しないので命中率は驚くほど低いです。 それもそのはず、この手砲が世界で初めてまともに使われたのは千三百年代のフス戦争だったのです。英雄ヤン・ジシュカはこの手砲を巧みに使った軍で重装騎士たちを蹴散らし、軍事史において輝ける戦果を残しました。 しかし、二百五十年以上が過ぎています。旧式にもほどがあると言ったところでしょうか。水軍に比べ、陸軍のお粗末さは目を覆うしかありません。 『明国軍』 主力 歩兵重視 武器 槍・弓・弩・刀・手砲・鳥銃(火縄銃)・大砲 防具 綿甲(内側に鉄板を仕込んだ革鎧)、明光鎧、鎖帷子、服 戦術 小銃戦術 弓矢戦術 砲撃戦術 命令系統 統一指揮で動く国軍 落ち目ですが、偉大なる中国軍です。火薬を生み出した国だけあって、火薬兵器はいい感じに充実しています。古い型の手砲を未だに使っていますが、武器は行き渡らない場合だけであり、大抵は火縄銃である鳥銃が最強歩兵武器です。しかし、数が足りないので弓や弩が目立つ傾向もあります。 ただ、中国人は銅が好きな民族であるため、銃の銃身は銅製であり耐久力に問題がありました。連続で射撃すると破裂するので、輸入品と比べ、中国産の銃は微妙な兵器であったことでしょう。 完全に最新装備で身を固めているというわけでは有りませんが、日本に対抗できなくもない装備をしていました。特に、日本軍の想定外射程から攻撃可能な大砲の威力は火縄銃の数と質で勝る日本を苦しめます。 古くから遊牧民族を敵にし、モンゴル民族の国である元を駆逐して建国をした明だけあって騎兵も優秀でした。しかし、明国騎兵は切れ味の低い剣しか持たなかったらしく、碧蹄館の戦いでは機動力を封じられたところを日本刀で斬られまくったとの説も存在しています。 防具は動きやすさを重視し、革の中に鉄板を仕込んだ綿甲が主流でした。前時代から使われたプレートとラメラーの組み合わされた明光鎧や、軽装で防御力の低い鎖帷子など、豊富な防具を取り揃えています。中国の軽装兵が鎧を着ないのはいつものことです。 ちなみに、ルイス・フロイスの記述によると、明兵は装甲が厚く、重量があるために機動力に欠けるが日本の槍や刀が通じにくく、難敵だったとのこと。重装騎兵対策のために一般歩兵さえ重装化させるお国柄が出ていたというところでしょうか。 『総括』 どう贔屓目に見ても、日本軍が圧倒的に強いです。とくに十万を超える火縄銃を国内保有していた日本軍は明国の精鋭部隊でさえも勝機を見出すのが難しいでしょう。唯一、大砲を持つことだけが明国軍の光明であったと言えます。 ただし、日本には指揮系統の脆弱さという弱点がありました。日本軍は戦国武将と呼ばれる独裁君主たちの連合軍であり、指揮系統を一元化した国軍である明軍と朝鮮軍に比べて明らかに脆弱でした。しかし、それをものともしない強さが日本軍にはありましたが。 それにしても、朝鮮陸軍の弱さはどうしようもありませんね。もし明国の力がなければ、いくら李舜臣が頑張っても朝鮮は滅亡していたに違いありません。 次に進む 前に戻る |