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前装銃とカラクリの種類


火縄銃は引き金を引くと弾丸が発射されます。この過程を成立させる存在がカラクリです。これによって火薬を引火させ、爆発させることで弾丸を発射します。今回は、この火薬を爆発させる方法について見ていきましょう。

前装銃とカラクリの種類

まず、前装銃について説明します。銃は弾丸を前から入れるか後ろから入れるかで大きく分類できます。火縄銃をはじめとして、古い銃は全て前装銃で、銃口から火薬と弾丸を入れます。そして、引き金のそばにある穴に点火薬を用意し、それを爆発させることで、銃身の中に入れた火薬を爆発させ、弾丸を発射します。

点火薬を爆発させる方法は大きく分けて二つ。直接、火を押し付けるか、火花で引火させるかです。いかに火をつけるかで銃は大きく分類されることになります。では、見ていきましょう。



『前装銃の種類』

【タッチロック銃】

最古の火縄銃が、このタッチロック式の銃です。火縄を手でもち、点火薬に押し付けて爆発を起す形式です。これだと両手で銃を持てず、どうしても命中率が低くなります。だいたい十四世紀頃に使われた銃がこの形式でした。

タッチロック銃を初めてまともに運用したのは十四世紀のチェコ人、ヤン・ジシュカです。キリスト教の異端であるフス派の反乱軍を率いる彼は、農兵を中心にした歩兵部隊で騎士中心の十字軍を幾度も破ります。しかも十倍の敵を、です。

これ以後、世界史においては火薬兵器が攻城戦のみでなく、野戦でも積極的に使用されるようになります。この兵器の息は長く、朝鮮出兵時の朝鮮軍が積極的に活用していました。


【マッチロック銃】

日本の火縄銃がこれです。火縄を銃に取り付け、引き金を引くことで火を点火薬に押し付け、爆発を引き起こします。両手で銃を固定できることから、命中率は格段に向上しました。

火縄銃は前装銃の中で最高の命中率を誇ります。引き金を引いた時の反動が小さく、銃が振動することがないからです。さらに、火を使用するためほぼ確実に火薬が爆発します。命中率、信頼性において他の追随を許しません。

弱点としては、常に火縄を維持する必要がある事です。これは補給物資という意味でも面倒ですし、常に火を維持して行動するのは予想以上に骨です。さらに、火の明りや臭いで敵に気付かれやすく、奇襲に使いにくいのも難点です。

最大の弱点としては、火が危険なので密集隊形がやりにくい事です。これら欠点のために、ヨーロッパでは後にフリントロック式の銃にその地位を奪われることになりました。


【ホイールロック銃】

全ての前装銃の中で、最高の戦闘バランスを維持しているのがこの銃です。引き金を引くと取りつけられた金属の歯車が回転し、摩擦によって火花を散らすことで火薬を爆発させます。

火縄銃よりも振動がありますが火縄を用意する必要がないため、運用がお手軽で補給の手間もかかりません。問題は、火花を利用する事です。この形式の銃は点火薬だけが爆発して中の火薬に引火しないなどの事故が発生しました。

さらに、現在でいうところのライターのような複雑な構造であったため、制作や修理に時間と金がかかるので、大量にそろえるのは不可能でした。そのため、使用者は主に金持ちであり、騎兵の馬上銃としての運用がメインです。

三十年戦争の騎兵はこのホイールロック銃を手に、戦場をかけ回りました。しかし、火縄銃以上に問題の多いこの銃は、のちに廃れていくことになります。ちなみに、ルイス・フロイスはこの銃を持っていたらしく、戦国大名が使った可能性もあったかもしれません。


【フリントロック銃】

前装銃の最終進化型が、この銃です。本当は、全ての前装銃の名前ですが、狭義の意味としてこの銃はマスケット銃と呼ばれています。火打石をとりつけ、それを撃ちつけることで火花を散らし、それで点火薬を引火させて、弾丸を飛ばします。

単純な構造と火縄がいらないという長所から、この銃は他の形式を一掃することに成功します。ナポレオン戦争で使用されたのもこの銃でした。さらに、ライフリングが生み出された後でも使用されており、アメリカの南北戦争でもミニエー銃としてこのフリントロックが使用されました。幕末でも活躍しています。

非常に有能な銃ですが、質として最悪のものでした。まず、火打石を撃ちつけるという行為がダメです。銃が激しく振動するため、どうしても命中率が低下します。さらに、火花で引火するので点火薬だけ爆発して弾丸が飛ばないこともしばしば。

実験では13発中の2発が、晴天下で不発に終わっています。ひどいありさまです。しかし、大量生産に向いており、火縄もいらず、扱いも容易なので、数をそろえるのが非常に簡単です。

なにより、密集陣形で使用できる安価な銃であることが最大の強み。ナポレオン戦争では、これを持つ銃兵たちによる密集陣形が勝利の鍵となりました。開発時期が遅かったので、戦国時代で使われた可能性は皆無に近いでしょう。



『火縄銃のカラクリ』

さて、次は火縄を火薬に押し付ける機械であるカラクリについて見てみましょう。本当は六種類ほどあるのですが、運用面で分類する必要もないので少し省略します。

カラクリは、火縄を押し付けるために使用するバネの位置で大きく二つに分けられます。外にバネを設置するのが外バネ式、中に設置するのが中バネ式です。さらにそこから細かくわかれます。とりあえず、見ていきましょう。


【平カラクリ:外バネ式】

火縄銃の中で、もっとも一般的なのがこの平カラクリです。板状のバネを使用する外バネ式のなかで、一番単純な構造をしています。戦国時代の銃の中で、半分以上がこの外バネ式でした。

安価なこの銃は大量生産に向いています。ただ、単純な構造のために勝手が悪く、バランスが崩れやすいという弱点があります。引き金の強さも調整できないため、個人差に対応できません。しかし、兵器は数を用意できるものが優秀なので、数をそろえれば問題になりませんでした。

外バネ式は安く作れるのが利点なのですが、発射機構を外に出しているため、耐久力に問題があります。そのため、破損の危険が多少はあるのですが、それに目をつぶれるだけの単純な構造のため、戦国時代で主力を張る事に成功したのです。



【外記カラクリ:外バネ式】

このカラクリは、かなり手の込んだ外バネ式です。平カラクリにゼンマイを追加して複雑にしたこのカラクリは、強さを3〜5段階で調整でき、撃ち手好みの引き金の強さを実現できます。

ただし、構造が複雑で値段が高くなりやすいので数は少なめです。しかし、決して少ないわけではなく、全体の一割がこの外記カラクリであったようです。



【一重ゼンマイカラクリ:内バネ式】

板バネを銃の内側に内蔵させた内バネ式の火縄銃です。内部に機構を隠したことで、故障率が多少低下しています。比較的安価な銃で、構造も比較的単純。それなりの数が戦場で使われました。

使用率は約二割。平カラクリに比べて多少堅牢であり、安心感がありはしたものの、コスト面では敵わなかったようです。ちなみに、この銃も引き金の強さを調整できませんでした。そのため、命中率は平カラクリと似たようなものでしょう。



【二重ゼンマイカラクリ:内バネ式】

日本独特のカラクリで、外記カラクリを内バネ式にしたようなものだと適当に考えてもらえると助かります。実際は違いますが、性能がそんな感じ。引き金の強さの調整力に定評があり、機構が内部なので故障にも強いです。

もちろん、お値段もお高めです。実はこの銃、江戸時代中期に開発された可能性が高く、戦国時代には使われていなかった可能性があります。現代の火縄銃撃ちたちがそろって最高のカラクリだと言ってはばからない性能を持っています。






このように、銃とカラクリには多くの種類がありました。時代によって異なる前装銃、構造によって異なるカラクリの値段と命中率。近世の銃はいろいろと奥深いので、みなさんも自分で調べてみることをオススメします。



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